2014年04月05日(土) 
初期のキリスト教徒は、ユダヤとローマの双方から迫害される立場にあり、またイエスの教えは難解で、まさに歴史上の他の多くの宗教運動と同じように消えゆく運命にあった。そのキリスト教が、現在20億人近い信者をもつまでに拡大したのは、伝道者パウロの布教方法によるところが大きい。

パウロはもとは、キリスト教の拡大を食い止める使命を持って、地域社会を渡り歩き迫害を加える敬虔なユダヤ教徒だった。しかし、歴史的文書によれば、パウロは西暦34年にキリスト教に改宗し、以降はこの新興宗教の激烈な支持者となって、その後二千年間にわたり西洋社会でもっとも優勢な宗教となる道を開いた。

キリスト教がユダヤ世界を越えて広がるために、食物の厳格な規定をゆるめ、割礼を要求することなく伝道を行うなど、キリスト教徒になるための高い障壁を取り除いた。そして当時の文明世界であるローマからエルサレムまでの社会的ネットワークについて、パウロが身をもって知っていた知識を駆使し、できるだけ多くの人々にメッセージを伝え改宗に導いた。

パウロはランダムに歩き回ったのではなく、キリスト教がもっとも効率的に芽生え、広がるような、人物、場所、大きなコミュニティを選別して伝道に訪れた。12年間にパウロが歩いた距離は、2万キロに及んだという。ニュースやアイデアは足で運ぶしかなく、現代では想像もできないほど圧倒的に情報伝搬力の低かった時代にあって、神学と社会的ネットワークの両方を効果的に活用したパウロは、キリスト教の最初にして最大のセールスマンであり、功労者であったと言える。

パウロの布教活動の優れていたところは、キリスト教の置かれた立場や情報伝搬性の低さという圧倒的に不利な条件の中で、驚くべき成果をあげたところだ。それをバラバシは、パウロが、キーパーソン・地域・コミュニティを選んで直接訪問して伝道活動を展開したことを評価している。

布教に限らずセールス活動全般においては、上記のような手法が当然のように取り入れられているにも関わらず、多くの地域ネットワークの広報活動は網羅的・単発的・限定的である。「人材」「地域性」「ネットワーク」を活用した戦略的アプローチを実施しているところは、西千葉において商店街を舞台としてシニアと大学生をつなぎパソコン教室を基盤に活性を図っているなど少数に止まっており、今後益々運営者の企画・実践力が問われることになると思われる。

Albert L.Barabasi著/青木薫訳、2002"LINKED:The New Science of Networks"、NHK出版、pp.9-11

閲覧数14,567 カテゴリ読み物 コメント3 投稿日時2014/04/05 07:56
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