2014年05月12日(月) 

 社会心理学者の宮田加久子は「地位や属性を越えて多様な人々との関係をつないでいく橋渡し型ソーシャル・キャピタルでは、一般化された互酬性(一般的互酬性)の規範が維持されており、そこでは一般的信頼が培養されている」と述べているが、まさに「ほどよい閉鎖環境」にある地域SNSの内部では、徐々にではあるが宮田の指摘する環境が構築されつつある。では、地域SNSと一般のインターネットでは、一般化された互酬性にどれほどの違いがあるのだろうか。

 インターネット上における一般化された互酬性の調査については、小林哲郎・池田謙一が山梨県で調査行い、ネット上での一般的互酬性がe-デモクラシーへの参加意欲を促進することを明らかにしている。山梨県内の40地点において選挙人名簿からそれぞれ20~65歳の住民33名を無作為に抽出しアンケートを実施。計画サンプル1320人に対して1002人から回答を得た。その結果、ネット上での一般的互酬性については、以下のようであった。

○インターネット上で人から親切にしてもらった場合、自分もインターネット上で他の人に親切にしようという気持ちになる(一般的互酬性)
 そう思う 14.5%
 まあそう思う 33.0%
 あまりそうは思わない 18.0%
 そうは思わない 24.0%
 無回答 10.5%

○インターネットの上でも、困った時はお互いに助け合うというルールが守られている(互酬性の規範)
 そう思う 1.5%
 まあそう思う 8.5%
 あまりそうは思わない 34.5%
 そうは思わない 45.0%
 無回答 10.5%

 この調査で小林・池田は、「ネット上での一般的互酬性は必ずしも低くはないが、一般的信頼感は低い」と評価し、その原因としてネット上に流れる情報が多くの場合信頼に足るものではない(真偽の確認が困難)であることを指摘している。また、ネット上での一般的互酬性を高めるためにはネットの集合的利用の中で利用者が相互扶助に気づくことが必要であると述べている。

 地域SNSは、小林・池田の指摘する要件を満たすコミュニケーションツールであるが、実際に一般のネット上の利用に対して効果があるか、下記の方法でひょこむにおいてアンケートを実施し、その結果を比較した。

●調査方法
・サンプリング:地域SNSひょこむの全ユーザが対象
・調査期間:2009年4月13日~2009年4月25日
・サンプル数(回答数):一般的互酬性(442人)、互酬性の規範(354人)
・調査方法:OpenSNPの簡易アンケート機能を使用した個人名無記名式のWEBアンケートをオンラインで実施。全メンバー(約4900人)にメールで告知。地域SNSにログインして、案内メッセージに従ってフォームを表示する。重複投票は禁止。
・回答形式:当てはまる項目をラジオボタンで単一選択する。コメントを自由記入。

○「ひょこむ」で人から親切にしてもらった場合、自分も「ひょこむ」で他の人に親切にしようという気持ちになりますか?(一般的互酬性)
 そう思う 74.7% (330)
 まあそう思う 22.0% (97)
 あまりそうは思わない 1.1% (5)
 そうは思わない 0.4% (2)
 無回答 1.8% (8)

○あなたが「ひょこむ」で困ったときには、お互い助け合うというルール(雰囲気)が守られていると思いますか?(互酬性の規範)
 そう思う 29.1% (103)
 まあそう思う 44.1% (156)
 あまりそうは思わない 12.4% (44)
 そうは思わない 1.1% (4)
 無回答 13.3% (47)

 一般的なネット上と地域SNSとの相違はこのグラフの比較で明確なように、ネット上では半数程度しか意識していなかった一般的互酬性は、地域SNSでは96%以上の利用者が意識しており、全体の75%近くが明確に認知していることがわかる。また、ネット上ではほとんどみられなかった一般的信頼についても、7割以上の利用者が意識しており、3割弱は明確に認知している。

 自由記述のコメントにも、利用者の意識が高いことが明確に現れている。一般的互酬性については、コメント総数173件 (回答総数の約39%)のうち、「人間としてあたりまえのこと」「人から恩を受けて何も返せないのは歯痒い」「一日一善に通じるものがある」など普段から助け合いに心がけているという意見が多い。また「根底に信頼があるので特別な感情が涌いてくる」という仕組みを評価するコメントもあれば、十分に活用できていないことに関する問題提起も少なくない。総じて、インターネットのみならず日常社会よりも地域SNSでは一般的互酬性の規範が成立しやすいという意識が定着していると観察される。

 一般的信頼に関するコメント総数は114件(回答総数の約32%)で、「安心して使える」や「実際に困った時に助けられた」「仲間どうしなら当然」などという直接的な回答だけでなく、「雰囲気を感じる」「期待している」というように間接的な印象を持っている人が多い。場への信頼関係が一般的互酬性と比べて明確に出てきていないのは、例えば「日本人はアメリカ人に比べて他者一般に対する信頼感が低い」 という環境要素だけでなく、ひょこむにおいては「助け合う」というルールを明示せず、個々の体験や感性に依存してじっくりと醸成させようとしていることも理由にあげられる。

 このように、ほどよい閉鎖性と利用者の情報依存的信頼が確保された地域SNSでは、相互扶助的な行為が可視化され、また弱い紐帯を媒介とした支援的情報発信が活発に行われることでネットワーク内に一般的互酬性が醸成され、「場」の一般的信頼を向上させていることがわかった。この好循環は、大きなネットワークでは実現することが困難で、比較的小さなネットワークで可視化しておいて、徐々に成長させていくことが重要であるという方法論についても明確となった。

閲覧数1,693 カテゴリ日記 コメント8 投稿日時2014/05/12 16:52
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